前立腺の話( AKTテレビ )



前立腺ってあまり聞き慣れない言葉ですが、何ですか?
前立腺とは男性だけにある臓器です。
膀胱の出口にあり、クルミぐらいの大きさの生殖器官の一つで、精液の一部を作っています。 前立腺の中を尿道が通っているので、前立腺に何らかの問題が起こると、オシッコの出方に 影響を及ぼします。

前立腺の病気にはどんなものがあるのですか?
前立腺肥大症、前立腺癌、前立腺炎が主な病気です。
前立腺肥大症と前立腺癌は、早くても40歳代後半、一般には50歳代以降に発症する病気です。 前立腺肥大症は、尿道を取り囲んでいる前立腺の内腺といわれる部分が大きくなる良性の腫瘍です。 これに対して、前立腺癌は前立腺の外側の外腺からでる悪性の腫瘍です。 アメリカでは、男性で最も発生率が高い癌です。日本では、これまでそれほど多くなかったのですが、 最近急激に増えてきました。 また、前立腺炎は思春期以降の男性であれば、年齢と関係なく罹る可能性があり、尿道から細菌が 入って起こる炎症です。

前立腺の疾患が増えてきているといいますが、どうして増えてきたのですか?
原因としては、食生活の欧米化で高脂肪食が定着したことや、 高齢化社会の到来があげられます。また、診断技術の進歩も関係しています。

男性では誰でも罹る可能性があるのですか?
そうです。男性の病気で女性には直接関係のない話ですが、 女性の方も、ご主人や、お父さん、お爺さんのことを思いだしてみて下さい。 夜何回もトイレに起きたり、トイレに入ってもなかなか出てこなかったり、 お酒を飲んだ翌日にオシッコの調子が悪い、などといっていませんか。 前立腺の病気の可能性があります。

どうして肥大するのですか?
前立腺の肥大も癌も、男性ホルモンの働きが低下する年代に なって起こってきますので、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスの不均衡が原因だとい う説があります。しかし、どちらもはっきりとは分かっておりません。

どんな症状がでた時、前立腺の病気が疑われますか?
トイレが近い(特に夜2回以上)。排尿しようと思ってもすぐでない。 尿線が細く、勢いがなく、途切れる。排尿が終わるのに時間がかかる。 排尿がきちっと終わらず、切れが悪い。排尿後に、まだ残っている感じがする。 急に排尿したくなり、我慢が出来ない。尿を漏らしてしまう。 などの症状が出現してきます。
今まで夜トイレに起きなかったのに、毎晩起きるようになった時や、オシッコの勢いがなく、 切れが悪くなったら、要注意です。

そういった症状がでたときには、早めに病院に行った方が 良いのですね。では、どうやって診断するのですか?診断は難しいですか?
問診で排尿症状を詳しく聞いた後、前立腺を直腸から指で触って 前立腺の状態を見ます。左手で"こぶし"をにぎって下さい。 右手の人差し指で、こぶしの親指と人差し指の間を押して下さい。 こぶしに力を入れると弾力性をもって触れますね。これが前立腺肥大症の硬さです。 今度は、親指の付け根をさわってみて下さい。硬いですよね。これが前立腺癌の硬さです。 石のように硬く触れます。前立腺炎の場合は、硬さは様々ですが、強い痛みがあります。 超音波検査では、前立腺の大きさと形態、膀胱と尿道との位置関係を調べます。 尿流測定では排尿状態を客観的に記録します。

他に、前立腺肥大症と癌を区別する方法はありますか。
血液検査で、腫瘍マーカーの前立腺特異抗原であるPSAを測定します。 PSAが高値の場合には癌を疑います。この検査法の進歩により、触診や超音波検査で分からないような 早期の癌も、見つかるようになってきました。PSAが4.0ng/ml以上の時には、癌を疑い前立腺生検を行います。
その他、手術適応や癌との鑑別のため尿道膀胱造影や内視鏡検査、CT、MRIを行うこともあります。

前立腺肥大症の治療は?
1)薬物療法:α交感神経遮断剤〜尿道の緊張を緩める。抗アンドロゲン剤〜男性 ホルモンを抑え前立腺を縮小する。その他、植物、アミノ酸製剤や漢方薬も使われます。
2)手術療法:経尿道的前立腺切除術(TUR−P)が最も行われていますが、前立腺が大きい場合には、 前立腺摘出術が行われます。
3)その他:レーザー治療や温熱療法も行われています。

前立腺癌の治療は?
前立腺癌では、開腹や内視鏡下の前立腺全摘除術のほか、放射線療法、 ホルモン療法、化学療法などがあります。これらの治療法を組み合わせて、いわゆる集学的治療法も 行われています。前立腺癌の組織所見によっては、ただ注意深く観察するだけという場合もあります。

前立腺炎の治療は?
前立腺炎は、抗生物質、消炎剤、植物製剤や漢方薬を組み合わせて治療します。

前立腺肥大症や癌にかからないような予防法はありますか?
前立腺肥大症も癌も、なぜ発症するのか、はっきりした原因は分かっていません。 年をとるに従って多発しますが、誰でも年をとるわけですから、残念ながら予防法の決め手はありません。

日常生活で気をつけることは?
食事では、肉や動物性脂肪を控えめにして、緑黄色野菜や新鮮な 果物を多くとるのが良いといわれています。また、お酒や刺激の強い食事を控えめにすること、 適度の運動を行うこと、便通を良くすること、オシッコを我慢しすぎない、下半身を冷やさない などの注意も大切です。

ところで、前立腺癌検診が始まったと聞きましたが?
秋田県医師会では、前立腺癌早期発見のため、50歳を過ぎたら、 前立腺癌検診を受けることを勧めております。採血を行い腫瘍マーカーのPSAを測定する 検診ですが、すでに始まった市町村もあるようです。 詳しいことは、市町村に問い合わせて下さい。


− AKTテレビ,Dr.I,2001年8月放送の要約 −

戻る